第3回 SC帯広
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講演:「チタン表面の親水化処理の意義について」
講師:吉成正雄先生(東京歯科大学口腔科学研究センター)
<講師より>
「超親水性」を示すインプラントは、血液の濡れが格段に向上することから注目を集め、骨形成能に優れるとの報告が多く見られるようになった。現在、超親水性インプラントとしてSLActive(Straumann社)が日本で市販されている。このインプラントは超親水性を示すだけでなく、表面にナノ構造が付与され、骨形成能をさらに亢進するとの報告がある。一方、超親水性を「付与する」表面処理法として紫外線(UV)処理、および低温プラズマ処理も紹介されている。このうち、特定の波長によるUV処理はインプラントの「光機能化」と呼ばれ、画期的なインプラント表面処理法として衆目を集めている。しかし「光機能化」なる専門用語はなく、仮に「光機能化」を、光(主に紫外線領域の波長)を利用してチタン表面を改質する技術とすれば、「光機能化」により超親水性を得ているのはUV処理と低温プラズマ処理の2つということになる。また、チタンの骨結合能力を向上させるためには、親水性が大きいだけでは十分条件とはならず、炭化水素の制御や表面電荷の最適化が必要であるとの意見もある。
我々の市販インプラントの調査によると、開封直後では疎水性や超親水性を示す様々なインプラントがある一方、5秒間の大気圧プラズマ処理により全てのインプラントで超親水性を示した。また、光を使用しない「超親水性」現象を含め、超親水性の発現は炭化水素の分解・除去、表面水酸基の存在状況に左右され、この現象は表面電荷に影響を与えることを明らかにした。
このように、「光機能化」そのものについてのコンセンサスがないばかりか、超親水性を付与したインプラントの有効性に関しても、ヒトに対する臨床応用でエビデンスを得ていないのが現状である。本稿では、先ず「超親水性表面処理法」にはどんなものがあるか、超親水性はどの様な表面処理で得られるか、超親水性と炭化水素、表面水酸基、表面電荷とはどの様な関わりがあるかを概説する。そして、軟組織やバイオフィルムに対する超親水性処理の効果について、主に文献を引用して解説する。さらに、インプラントの最近のトピックスについても触れてみたい。
<吉成先生プロフィール>
1968年 | 茨城県立水戸第一高等学校卒業 |
1972年 | 茨城大学工学部電子工学科卒業 |
1980年 | 東京歯科大学歯科理工学講座 講師 |
1986年 | 歯学博士の学位受領(東京歯科大学) |
1992年 | スウェーデン王国ルンド大学 客員講師 |
1998年 | 経済産業省インプラント材料の試験方法関係JIS原案作成委員会委員 |
2002年 | 日本歯科材料協議会ISO/TC194/SC8(インプラント)歯科対策委員会委員 |
2003年 | 日本口腔インプラント学会認定制度による基礎系指導者 |
2003年 | 日本歯科理工学会認定制度によるDental Materials Senior Adviser |
2008年 | 東京歯科大学口腔科学研究センター(口腔インプラント学研究部門主任)・歯科理工学講座 教授 |
2015年 | 東京歯科大学口腔科学研究センター客員教授 |
・日本口腔インプラント学会:基礎系指導者
・日本歯科理工学会:Dental Materials Senior Adviser
・日本再生歯科医学会:理事
・経済産業省:インプラント材料の試験方法関係JIS原案作成委員会委員
・日本歯科医師会:ISO/TC194歯科対策委員会委員
・日本歯科材料協議会:ISO/TC194/SC8(インプラント)歯科対策委員会委員
多数のご参加をお待ちしております。